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映画(Hedwig and the Angry Inch・The Brown Bunny)

· 映画

引き続き更新していきます。

前回映画について書いたので、その延長で。

OAで生涯ベスト作品を聞かれて紹介したもの。ブログにもまとめますねというお約束でしたので。

(あ!色ペンが使えることを発見したぞ!)

●Hedwig and the Angry Inch(ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ)

(イントロダクション)ジョン・キャメロン・ミッチェル作品。1997年からオフ・ブロードウェイで上演されていたミュージカルで、2001年に映画化された(日本では2002年公開)

原作、脚本、監督、主演まで全てジョン・キャメロン・ミッチェル。

(ストーリー)愛と自由を手に入れるため性転換手術を受けたものの、手術の失敗によって股間に「アングリーインチ(怒りの1インチ)」が残ってしまった、男でもあり女でもあると同時にそのどちらでもないロックシンガー、ヘドウィグ。幾多の出会いと別れを経験し、傷つき倒れそうになりながらも己の存在理由を問い続け、「愛」を叫び求める姿を描いたミュージカル。

(感想)ストーリー、映像、音楽、全てにおいて完璧。

ミュージカルが原作なので劇中に歌唱シーンがいくつもありますが、その度ごとにヘドウィグが美しすぎる。かっこよすぎる。その完成度の高さと言ったら。リアルなロックスターも敵わないほどの圧倒的なスターです。

作品中の一つのテーマは、ヘドウィグが探し求める愛。それは母親から聞かされた「愛の起源」に基づくものなのですが、これが哲学者プラトンが唱えた「ベターハーフ」と呼ばれるもので「人は昔2人でひとつだった。が、神の怒りによって分断されてしまう。なので人間はその失った半身を探すように伴侶を求める。その片割れと出会うことによって本当の自分自身が完成される」というもの。いわゆるソウルメイト的なことですね。この描写がとてもロマンチック。(正直私はベターハーフは信じていないのですが笑 だって誰かとでなければ、自分1人では完成形の本来の自分になれないっていうのはロマンチックな一方であまりに情けなくないですか? というわけで個人的にこの考え方を支持はしていないけどそれは関係なく作品は素晴らしいので推せる)

その愛を求めて彷徨うヘドウィグのストーリーもさることながら、文句なしに素晴らしいのはサウンドトラック。とにかく素晴らしい。作品と映像ありきでなく、サントラをただの音楽作品として聴いても成り立つ。あるロックバンドの一枚として、聴ける。もうこればかりはものすごくいいアルバムです。魂が震える系です。絶対聴いてほしい!(特にグラムロックなどお好きな方は)

サントラは全曲捨て曲なしの全曲神曲なのですが。

↓特にこの「Midnight Radio」が抜群に名曲かつ、ヘドウィグが美しいすぎる。(おでこに十字架の歌ってる人がヘドウィグね)

というわけで、この作品は生涯ベストで間違いないです。

●The Brown Bunny(ブラウン・バニー)

(イントロダクション)2003年公開。ヴィンセント・ギャロ作品。監督作品2作目。監督、脚本、撮影、主演、音楽、美術まで全部本人です。自主制作ロードムービー。

(ストーリー)バイクレースで各地を巡業するレーサーのバド。次のレース開催地であるカリフォルニアへ向かう。その道中である日、かつての恋人デイジーの母が住む家に立ち寄るバド。そこでは、デイジーとの幸せな思い出の象徴だった茶色い子ウサギが今も変わらぬ姿で飼われていた。動揺しながらも再びアメリカ横断の旅に出たバドは、それぞれ花の名を持つ女と出会っては立ち去ることを繰り返す。恋人と別れた悲しみから立ち直れないバドは、出会う女性達に恋人の面影を求める。やがて、デイジーと一緒に暮らしていたロスの小さな家に辿り着くのだが…。

(感想)えーまず言っておきます。wikiによりますと「本作は第56回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、観客のあいだで賛否両論の大論争を巻き起こした。映画評論家のロジャー・イーバートは「史上最悪の映画」と酷評した」と。ええ、そうなんです。あらゆる方面で酷評されてます、この作品。酷評の理由はおそらく、恐ろしく退屈、不毛なシーンが続く、え?これいつになったら話が展開してくの?、ベッドシーンがえぐい、で!そのオチかよ!、などなどかと想像します。いや、わかります。わりとずっと無味無臭なシーンが続いて、物語が大きく動くのはラスト何分か。でもまぁまぁ落ち着いてくださいよ、これロードムービーですから。こういうもんですよ。

でも確かに、はっきり言って好みと評価は様々に分かれる作品だと思います。嫌いな人は嫌いでしょうね。(ギャロ作品の「バッファロー’66」が好きな方でも、この作品が好きとは限らないと思います。あれも超名作ですが、あの作品にあるポップさやユーモアみたいなものはこの作品には一切ありません。でも私はこっちの方が好きです)

 

まぁギャロがやりたい放題やっただけの自慰作品と言ってしまえばそれまでかと。

でもそもそも私みたいなギャロさま大ファンにとっては、ギャロの自慰でいいんです。それが見たいんです。(若干サイコパス的発言になってますか?大丈夫ですか?)つまり、ギャロの生み出す芸術品を支持しているので、自慰だろうとナルシズムだろうと、それで成立なんです。ていうか、芸術ってそもそも独りよがりなものじゃないですか!

この作品の素晴らしいところは、ストーリーの救いようのなさと、微かな光が美しいローファイな映像。こんな映像を形にできるのは、ギャロがどこまでも繊細だからでしょう。ここまで、人間の弱さ脆さ、醜さ、みたいなものを描ききることができるのは、ギャロ本人にその要素があるからなんでしょうね。ある意味でドキュメントに近いような。本人の投影。ギャロは、繊細でネガティヴで完璧主義な芸術家なんだとお見受けします。だから好きです。

因みに、なんだそのオチ!というリアクションの方も中にはいるようですが、私は衝撃のラストにはウソみたいに号泣しました。素晴らしい脚本だと思いました。クロエ・セヴィニーとのオーラルセックスのシーンもえぐいと批判されたようですが、私は美しいとすら思いました。

でも観賞後に、気持ちのよさは一切ありません。むしろ暗い気持ちが胸に残る作品です。

そして、この作品もサントラが素晴らしい。ギャロと盟友ジョン・フルシアンテとの共作。切ないリフとジョンの泣きのギターが、映像にマッチしてそれだけで涙を誘います。

ギャロとジョンと、そこにクロエ・セヴィニー!好きな人たちばかりがクレジットに並ぶ!正直、私得でしかない作品です。

興味がある方は、心が元気な時にぜひご覧ください。(沈んでいる時に観ると、たぶん暗い穴の底に突き落とされると思うので・・)

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